16年間、ずっとMoogに憧れていた

シンセサイザーが並ぶスタジオに佇む黒猫

前編では、MoogとBuchlaの違いを整理しました。
後編は、私自身がなぜBuchlaを選択したのか、お話します。

Moogへの憧れは、2010年ごろから。
音楽を始めたときから、ずっと憧れの機材でした。

とにかく、見た目がメカメカしくてかっこいい!
そして時々、バンドや音楽サークル界隈で、周りの人が「Moog Moog」言ってる。
どうやら、よく分からないけど音が良いらしい。

そして、渋谷の鍵盤堂で、試奏しにいきました。
学生だったので、到底買うつもりではなかったけど(笑)

私が当時使っていたのは、RolandのJUNO-Di。

デジタルサンプリング音源の、シンセサイザーです。
JUNOも好きだけど、音は、まったく違いました。

Moogの音は、生きている感じがした。
なんかこう…メカの体温を感じる!

でも、やっぱり学生には高すぎました。
「いつか……」

その憧れは、つい最近まで続いていました。
近頃発売されていたMoogの機材も常にチェックしていました。

Labyrinth。
もう名前が好き。

Messenger。
モノシンセで、極太な音が出る。

MAVIS。
安価で、モジュールシンセへのエントリーとしてかなり検討しました。
定価44,800円。


見た目が大好きなGrandmother。

SUBSEQUENT37。
昔のMoogっぽくてたまらない。

存在感MAX、極太ゴリゴリベース。
Minitaur。

アンビエントに最適な癒し系の、Sirin。
高騰しすぎてるし、そもそも中古でもなかなか手に入らない。

やっぱり、どれも生きている音がする。
生暖かい呼吸を感じる…!

どれも、気になっていた。
でもなかなか高くて、渋っていました。

そしてついに!
今年2026年にBehringerのD-MINIが出たとき。

「ついに来た!買える値段のMoogサウンドが!」

絶対に買うつもりでいました。

販売店ごとにばらつきはあるけど、20,000円前後。

それでも、約90万円のBuchla Music Easelを選んだ理由

そもそも、Buchlaを知ったのは2025年でした。
三軒茶屋で行われていた電子音楽のライブで、Buchla Music Easelを見かけたのがきっかけです。

鍵盤があるのに、鍵盤に縛られない

前編で、スザンヌ・チアーニの言葉を紹介しました。

「鍵盤は、楽器の可能性を狭めてしまった」

私は、ここにすごく共感しました。
Buchlaを選んだのは、まさにこの理由です。

私は元々クラシック出身で、ピアノをやっていました。
なので鍵盤があると、どうしても「ちゃんとしたものを作らなくてはいけない」気持ちになってしまうんです。

Moogシンセサイザーの前に座る黒猫

Music Easelにも、鍵盤はあります。
でも、普通の鍵盤ではありません。

触れる強さや面積に反応する、平らなプレートです。
だから弾いていても、縛られている感じがしない。

むしろ何か魔術的なものを操っている感覚があります。

そこには、未知の広がりがありました。

一生、飽きない。

自分の音楽を、ずっと広げていける。
宇宙でした。

これを買ったら、私はもうずっと音楽から離れないでいられるだろうなと思った。

Commandではなく、Easelにした理由

Buchlaには「Easel Command」もあります。
鍵盤のない形で、30万円くらいです。

私がそもそもモジュラー界隈で、モジュールに明るかったらこっちを買う選択肢もあったのかもしれません。

でも、全くやったこともなく、そういった機材も持たない中で使うとなると。
きっと私は、MIDIキーボードやシーケンサーをつないでしまう。

そうすると、また自分で制限をつけてしまう。
だからもう、未来の自分と話し合って。

思い切ってEaselにしました。

少年のロマンが、全部詰まっている

そして何より、見た目が好きすぎました。

カラフルなつまみ。ずらりと並んだピン。
ケースに収まっているあの感じ。

おもちゃみたいで、子どものロマンが全部詰まっている。
私の主観に、ぴったりでした。

いい音とは?の記事で、こう書きました。

私にとってのいい音は「子どものころの子供部屋」だと。

宇宙船のコックピット風シンセ空間に佇む黒猫

susuman

Easelは、まさにあの子供部屋。

楽器というより、宇宙船のコックピット。
宇宙を旅する気持ちになれる。

それが、Music Easelでした。

試奏してみた感想

モジュラーは全く触れたことがなかったので、かなり心配でした。

「そもそも扱えるのか?」

でも、カラフルに色分けされていることで、何をどこに繋げばいいのか。
どの色のノブやIN OUTが、どのパラメータを動かすのか。

直感的に理解できる仕様でした。

susuman

なんとなくいじってたら、もうそれっぽい。

店員さんも、「Easelは優しいですよ、意外と大丈夫」
そう言っていました。

Easelで、やってみたいこと

空間ごと、楽器にする

チアーニのインタビューで、一番響いた言葉があります。

「空間全体を、楽器として扱っている」

パンや空間系のエフェクト。
音の配置を考えることは、当たり前にやってきたつもりでした。

でも、彼女の言う空間は、もっと多面的でした。

空気は、いつも動いている。
空間は、絶えず呼吸をしている。

人々の熱気によって、エネルギーも絶えず動いてる。

空間のスピリチュアリズムみたいなものを、彼女は見ているんだと思います。

実写風の大きなクラブでのライブシーン。複数のモジュールシンセサイザーやパッチケーブルがはっきり写っている。

絶えず、生まれ変わり続けている。
私はただ、音の配置を気にしていただけでした。

でも、音と空気がぶつかり合って、生まれる空気の振動そのもの。
その場かぎりの、空の雲のような音の世界。

susuman

私もそんなものを体感できたら、新しい音楽の可能性にどんどん覚醒していけそうだと思いました。

EMX-1とのポリリズム

Easelには、5ステップのシーケンサーがあります。
8じゃないんですよね。そこが好き。
(もちろん3とか4も設定できます。)

それを、EMX-1の、タイトなリズムとぶつけてみたい。

ずれながら、重なっていく。
そんなポリリズムを、楽しんでみたいです。

700Smの、生きた音と一緒に

そこに、miniKORG 700Smの生きた音がうごめいたら。
想像しただけで、ゾクっとします。

700SmとEasel。
どちらにも、スプリングリバーブが付いています。

スプリングリバーブ同士の響きの違いを、聴き比べたい。
混ざり合ったときの体感も、味わってみたい。

susuman

今から、とても楽しみです。

ありえないほど高い買い物だったけど、後悔はしていません。

だってこれはもう、リセール気にして、自分のものじゃないみたいに持つ機材じゃない。

一生の相棒ですもの。

あなたは、どっちを選ぶ?

16年憧れたMoog。
それでも私は、Buchlaを選びました。

無限の音楽の可能性を感じたからです。

あなたの作りたい音楽は、どっちの海岸にありますか?

となりのTOI