音とは?音楽とは?ケージの「4分33秒」
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ジョン・ケージの「4分33秒」をご存知でしょうか?
演奏者が、4分33秒のあいだ、音を出さない曲です。
観客の拍手や、咳払い、椅子を引く「音」。
「4分33秒の間、会場で鳴る「音」のすべてが「音楽」だ。」
という理論に基づいた、有名な現代音楽曲です。
あなたは、この曲を音楽だと思いますか?
しかし、この問いを考える前にまずぶち当たる壁がこれです。
そもそも、「音」と「音楽」は、何が違うの?
この疑問の入口に立てる本に、出会いました。
伊藤浩介さんの『脳と音楽』です。
この記事では、本の第1章と第2章をもとに、次のことを、やさしく説明します。
- 音とは?
- 音色とは?
- 協和音とは?
- 不協和音とは?
- 音と音楽の違いは?
むずかしい話は、すべて、身近なたとえで噛み砕いてみます。
自分の理解のために、備忘録としてこのブログを残します。

susuman
私は音楽を作るときに、鍵盤を使いたくない時があります。
それは、12音階の間に存在する音も、使いたいと思うからです。
かつて私の大学の先生が、
「鍵盤は音を制限する暴力的な方法だ」
と言いました。
それが、頭に残っているからかもしれません。
オリジナルなものを作りたいと思う時、この枠組みを外れてみたいと思うのです。
音波とは?「音」との違い

「音とは何ですか?」と聞かれたら、あなたは、どう答えるでしょうか?
たいていの人は、「空気の振動」と答えるのではないでしょうか。
たしかに、学校でそう習いましたよね。
でも、この本によると、それは、半分だけ正解です。
空気の振動は、「音波」と呼ばれる、物理の現象です。
一方「音」は、その音波を、耳と脳が受け取って得られる感覚です。
犬が吠えました。
これは「音源」です。
犬の声は「音波」として空気を伝わって、私たちの耳に届きます。(物理現象)
そして私たちの中で、それがどれくらいの大きさで。
どれくらいの高さで。どんな声なのか。
それが心地よいのか。
うるさいのか。
それが「音」として脳で知覚されます。
ということはです。
「誰もいない部屋で、ラジオが鳴っていたら、そこに音はあるのか」
この本のように脳科学の観点でいうのであれば。
音波は出た。
けれど、聞く人(脳)がいないので、音は存在しない。
音波は物理現象であり、音はあくまで「脳の主観的な感覚」。
私たちが学校で習ったのは、音波の方だったのですね。
音の三要素とは?大きさ・高さ・音色

音の感覚は、「大きさ」「高さ」「音色」の3つでできています。
これを、「音の三要素」と呼びます。
たとえるなら、こんな感じです。
| 感覚 | たとえるなら | 性質 |
|---|---|---|
| 大きさ | ボリューム | エネルギー(振れ幅) |
| 高さ(ピッチ) | ピアノの鍵盤 | 周波数(1秒あたりの揺れる速さ) |
| 音色 | 個性 | 波形(かたちの個性) |
ボリュームを右に回すほど、大きな音ですよね。
鍵盤の右を弾くほど、高い音です。
よくオーケストラで、演奏の前に音合わせで使うA4(ラ)は、1秒間に440回振動する音です。
440khz(キロヘルツ)というやつですね。
癒し系の音楽だと、432khzを使ったりします。
耳は、この振動の速さを、「高さ」として感じ取っています。

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音色は声にたとえるなら、同じピッチの「Ah〜♪」でも、人によって違う、個性のことです。
音色についてもう少し深掘りしてみましょう。
【ここに図:fig27_sanyoso】
音色とは?サイン波は、絵の具の「原色」

音色は、少し特別な要素です。
大きさと高さ以外の「音の個性」を、すべてまとめて、音色と呼びます。
同じ高さ、同じ大きさでも、ピアノとクラリネットは、違って聞こえます。
その違いを作っているのが、音波の「波の形(波形)」です。
丸い波形は、柔らかい音に。
ギザギザの波形は、硬い音に聞こえます。
そして、ここが面白いところ。
どんな波形も、「サイン波」という一番シンプルな波から作られます。
言うなれば、サイン波は、絵の具の「原色」みたいなものです。
原色を、いろいろな量で混ぜると、どんな色も作れますよね。
サイン波も、いろいろな高さ・大きさで混ぜると、どんな音色も作れます。
混ざり気のない音を「純音」。
同じ波形でも、周波数などを色々と混ぜてできた音を「複合音」と呼びます。
一度シンセについているオシロスコープなどで、音を作りながら波形で見ると分かりやすいかもしれません。
シンセが波形から音色を作る仕組みは、この考え方からきてます。
私がM-VAVEのFM-1に入れたカスタムファームウェアのBaud Girlも。
シンプルな波形から、無限に音色を作る機能があります。
Fm-1は、オシロスコープもついてますよ。
目で確認しながら音遊びをしてみたい方は、FM-1でぜひ遊んでみてください。
おすすめのカスタムファームウェアは、こちらで7つ紹介してるので気になる方は見てみてください。

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アナログシンセは、まさに絵の具のパレットみたいに音を作れる機械です。
純音のサイン波、結構好きです。
サブベースにもよく使います。
不協和音とは?耳の中の「座席」でたとえる

和音には、気持ちよく響くものと、濁って聞こえるものがあります。
濁って聞こえるほうを、「不協和音」と呼びます。
よくコードの表記にあるCm7だとかCadd9thだとか。
11thとかオーギュメントだとかディミニッシュとか。
Sus4とか。
これらは不協和音の仲間です。
まぁ濁ってるけど、使い方によっては不思議な感じがして美しいってやつです。
でも、なぜ「濁って」聞こえるのでしょう。
本はその理由を、「耳の中の基底膜という部分にある」と説明していました。
電車の座席でたとえると。
一つの音(乗客)は、基底膜(電車)の中で、「座席1つ分」で座ります。
二つの音(乗客)が、離れて座っていれば、それぞれ、ゆったり座れます。
このとき、二つの音は、はっきり分かれて聞こえます。
これが「協和」です。
でも、隣の音(乗客)が、座席と座席の間に入り込んでくると、窮屈になります。
この窮屈さが、「不協和」です。

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ちなみに。
電車の座席がガラガラなのに、なぜか自分の隣にピッタリ座ってくる人のことを、「トナラー」って言うらしいです(笑)
不協和音を生み出す音は「トナラー」ってことですね。

ここで面白いのが「どのくらい近いと、一番窮屈に感じるのか」です。
二つの音(乗客)の距離が、座席の幅の約4分の1のとき。
窮屈さは、最大になるそうです。
電車だとしたら、両隣に座ってたら「超窮屈」ということになりますね。

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ドだとしたら、ミは座席が一つ分(レの音)空いていて、快適。
ドの隣にドの#が座ってきたら、窮屈です。
でもコード使いやスケールによっては、オシャなのでアリです。
低い音は窮屈になりやすい
たとえるなら、高い音は、小柄な人です。
低い音は、大柄な人。
だから、低音で近い音を並べると、窮屈になりやすい。
電車で普通に座ってても、隣の人が大柄な人だと、より窮屈に感じると思います。
ベースやチェロやコントラバスが、広い間隔で音を重ねるのは、その性質に合わせています。

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低域の楽器を「トナラー」で重ねたら、楽曲がものすごく窮屈に聞こえると思います。
鍵盤楽器ができるまで
協和音には、面白い法則があります。
この面白い法則を使って作られているのが、いわゆる12音階です。
2つの音は、たとえば1:2や2:3のような。
単純な整数比の周波数のとき、とてもよく協和するんだそうです。
この「単純な整数比が協和する」ことは、古代ギリシャのピタゴラスの時代から、知られていました。
でも、その理由は、長いあいだ、分かりませんでした。
その後、その理論を元に現在の鍵盤の元になるものを初めて作ったのが。
同じく古代ギリシャ時代の学者、クテシビオスです。
ピタゴラス:
紀元前6世紀の哲学者・数学者。
クテシビオス:
紀元前3世紀の技術者・発明家。
2人は「鍵盤楽器の誕生」において、理論担当とメカニズム担当のような関係です。

ピタゴラスが「音の法則」を発見した
ピタゴラスは、鍛冶屋のハンマーの音同士が、美しく鳴る時があることに興味を持ちました。
そこから、「美しい協和音はシンプルな整数の比(2:1や3:2など)で成り立つ」
この音楽の数学的規則、「ピタゴラス音律」を発見しました。
これが西洋音楽のドレミの基礎となります。
クテシビオスが「自動で音を出す機械」を作った
ピタゴラスが発見した、音の理論(音階)が世に広まったあと。
クテシビオスはその音階を正しく配置した複数のパイプに、水圧を使って正確に空気を送り込む装置を開発しました。
これを、水オルガンと言います。
協和音の発見によって、不協和が排除されたように感じますが。
不協和音は悪者ではありません。
料理のスパイスのように、音楽に美しさをもたらします。

susuman
実際、今の音楽シーンでもたくさん使われています。
ちなみに私が好きな不協和音の感じはこの曲かな〜
キングダムハーツ2より、The 13th Side/下村陽子
音と音楽の違いは?私の今の答え
ここまでの話を、まとめます。
- 音は、空気の振動ではなく、脳が作る感覚
- 音楽の基本(全音、協和・不協和)は、耳の仕組みからくるもの
では、音と音楽の違いは、どこにあるのでしょう。
本の第2章までの範囲で、私は、こう読みました。
音は「食材」。
音楽は、脳の「味覚」に合わせて調理した「料理」。

料理は、人によって味の好みも違いますよね。
食材自体の好き嫌いもある。
同じ食材でも、苦いと感じる人もいれば、それがいいと感じる人もいます。
音楽も、同じです。
好きな食材(音)が使われた料理(音楽)は、美味しい(好き)と感じるでしょう。
そして、適度な不協和は、料理のスパイスのようなものです。
これも好みが分かれるところですよね。
さて、ここであらためて。
最初に聴いていただいたケージの「4分33秒」は、どうでしょう。
あの料理を、私は面白くて好きだと感じます。
エスニック料理みたいなものかな。
でも人によっては、料理もせずただとってきたニンジンが。
そのままお皿に出されているようにも感じるでしょう。
あなたはどうですか?
その食材、すなわち「音」を、料理、すなわち「音楽」として聴くかどうかは。
聴く人の脳しだいです。
そう考えると、万人ウケする音楽を作ろうなんていうのは、無謀なものに思えますね。
脳の数だけ好みがあるのですから。
結果論として、万人受けに近い形で大多数が好きと感じる料理は、いわゆるヒット曲なんでしょうね。

susuman
私は私の小さな町のラーメン屋みたいなところで。
「自分はこれが好きなんや!」
っていう料理を追求していきたいですね。
あなたは、どう思う?
あなたは、どんな食材が好きですか?
そして、それを使ったどんな料理が好きですか?
この記事で紹介した本
伊藤浩介『脳と音楽』(第1〜2章)
世界文化社/2024年発行

